今回のテーマは、正しい事業計画書の作り方についてです。
キャリアアップを考えている人にとって事業計画書は避けては通れない道です。
『計画より実行重視』が叫ばれている世の中ですが、それはあくまでも過度な計画の必要性を疑問視しているに過ぎず、計画が不要だという論争ではありません。
事業であっても案件であっても実行を支える『計画書』は無くてはならない存在です。
この記事が参考になる読者
- 事業計画書の良し悪しが判断つかない
- 事業計画書の書き方が分からない
- 事業計画書について詳しくなりたい
こうした方に向けて、ダメな事業計画書と良い計画書という対比を使いながら、具体的な実践テクニックも含めてまとめています。
この記事で得られるもの
- ダメな事業計画書の特徴が分かります
- 良い事業計画書の作り方が分かります
”事業”計画書とありますが、案件や部署の計画書にも活用できる内容になっています。
今回は、私が主にベンチャー企業の投資を検討するにあたってこれまで100社以上の事業計画書を見てきた経験を基にまとめています。
この記事の結論
- 実行フェーズが意識できていない計画はイケてない
- 良い計画はリスクが言語化・数値化されている
- 良い計画は想定リスクが実行プランに織り込まれている
それでは、進めていきます。
イケてない事業計画書の特徴
イケてない事業計画書は、実際に推進していく中で使えそうもない内容になっているものです。
『考え抜かれていない』と表現しても良いかもしれません。
イケてない事業計画書の特徴
- シナリオが1つだけしかない
- リスク認識が足りない
- 十分な実行プランが練られていない
シナリオが1つだけしかない
事業計画書には必ず計数計画が記載されています。
売上、費用、残金などの推移が年や月単位で表になっているものです。
この計数計画が1つのパターンしか用意されていない場合は、要注意です。
今後何が起こるか分からないわけで、計画値よりも上振れすることもあれば、下振れすることだってあります。(ほとんどの場合、下振れですが。)
つまり、シナリオがワンパターンしかないということは将来のリスクが織り込めていないことを指します。
金融におけるリスクとは、「何か悪いことが起きる」という意味ではなく、上にも下にもブレる可能性があるという『不確実性』のことを言います。
例えば、旅行に行くときに雨が降った時のプランを想定しておくかどうかで、当日の動き方は大きく変わります。
もし、「予定していたお店が閉まっていたら」「もし渋滞に巻き込まれたら」といったように、旅先で遭遇するであろう事態を事前に考えられていたとしたら、当日すぐに対応策を打つことができるでしょう。
つまり、事業計画書においては、ベースのシナリオ以外にリスクシナリオが必要になってきます。
リスク認識が足りない
事業上、想定されるリスクを予め明らかにしてあるかどうかで計画書の良し悪しが決まってきます。
例えば、事業成長を志す会社の事業計画書でよくあるのは、『人材育成期間が考慮されていない』です。
『営業マンを増やすと売上が上がる』というロジックで、採用した月からいきなり売上が増える計画にしてたりします。
しかし、採用された営業職の社員は、まず商材の勉強や営業資料の作成、業務の引継ぎ、新しい営業環境に慣れるための時間、など準備期間が必要です。
つまり、少なくとも採用後1カ月間は売上が0という可能性があります。
他の例では、『送料の値上げリスク』があります。
昨今、物流コストは年々増加傾向にあり、配送業者の値上げリスクは明らかです。
Eコマース事業であれば、配送費は利益に大きく影響を及ぼすわけですから値上げした場合のシナリオは予め見ておくべきでしょう。
このようにその事業におけるリスクというのは無数に存在しますが、とりわけ売上や利益に大きな影響があるリスクだけでも明らかになっていなければ『計画』とは言えないと私は考えています。
十分な実行プランが練られていない
実行施策の具体性の話になります。
「営業活動を強化して新規客数を増やします。」くらいザックリと書かれたものを多く目にしますが、これでは不十分です。
訪問営業を例に、どのくらいの粒度が必要かを書き出してみます。
- リーチする見込み客の属性(絞り込み)は?
- どのエリア、時間帯を攻めるのか?
- 営業マンの1日の訪問数は?
- 成約率から逆算した訪問数や営業件数は?
例えば、100件の訪問に対して1件の新規獲得数だとすれば、仮に10人増やしたければ1,000件の訪問が必要でしょう。
そして、営業マンの1日の訪問件数が10件だとしたら、1人で回ったら100日かかる計算になります。
ここまで細かく見て初めて実行プランと呼べるレベルになります。
つまり、『100日で1,000件の訪問を達成すること』がここでは営業活動と呼ばれるわけです。
最高のプランの作り方
イケてない事業計画書の欠点を補うことで、最高のプランが出来上がります。
最高のプランの作り方
- 複数シナリオが作られている
- リスクの洗い出しが行われている
- リスク対策を含めた実行計画がある
複数シナリオが作られている
ベースのシナリオに加えて、上振れするシナリオと下振れするシナリオの3パターンが理想です。
とはいえ、上振れするケースは稀なので、ベースと下振れの2シナリオを持つことが望ましいと考えています。
シナリオの呼び方
上振れ:アップサイドシナリオ、楽観シナリオ、ベストシナリオ、
下振れ:ダウンサイドシナリオ、悲観シナリオ、ワーストシナリオ、リスクシナリオ、ホラーシナリオ
事業というのは常にリスクを想定して地道にハードルを越えていくことが求められているため、このように『うまく行かない』ことを予め言語化、数値化しておくことが実行フェーズで計画が機能するために重要なことだと考えています。
リスクの洗い出しが行われている
下振れ時の数値計画を作成するにあたって、どういったリスクが想定されているのか?そのリスクは事業にどのくらいの影響を与えるのか?を特定しておくことが望ましいです。
また、リスクの性質を定義しておくこともここでは重要になります。
リスクの性質は大きく分けて2つあります。
外部与件と内部与件です。
外部与件とは、伝染病や災害、法改正など事業サイドでは、コントロールができないマクロ的なリスクのことです。
内部与件とは、退職リスクやシステム障害など事業サイドで管理が可能なミクロ的なリスクのことです。
特に事業サイドでリスクヘッジができる課題は徹底的に洗い出しておくことが重要です。
リスク対策を含めた実行計画がある
より踏み込んだ精緻な計画にする際には、リスク対策すら実行プランに織り込んでおくことが求められます。
例えば、新規事業開発における計画を作成するケース。
部門間の衝突が想定されるわけですから、予め実行計画には部門間調整というアクションを織り込んでおくと。
そうすることで「部門間調整を成功させるため」の準備ができるわけです。
計画のやり過ぎは要注意
以上のように、最高のプランニングというのは、計画の実行段階で想定される下振れリスクやその具体的な内容まで踏み込んで設計されているものを指します。
但し、注意点としては、勝手な解釈や想像ばかりに時間を取られ過ぎて計画過多になることは本質的ではありません。
実行することで初めて見えてくるリスクも多くありますので、計画にどこまで織り込むべきか?というバランスは非常に意識しておく必要があります。
具体的なプランニングスキル
事業計画を作成する際には色々とテクニカルなスキルが必要になってきます。
私が個人的に重要だと感じているテクニックの1つに『ロジックツリーの作成』があります。
KPIと呼ばれる評価指標の作り方については記事にまとめているので、この記事と併せて読んでいただくと、より実践的なスキルが身に付くかと思います。

まとめ
- 実行フェーズが意識できていない計画はイケてない
- 良い計画はリスクが言語化・数値化されている
- 良い計画は想定リスクが実行プランに織り込まれている
それでは、また!