今回のテーマは、会議のファシリテーションテクニックについてです。
勤務時間に占める会議の割合は非常に高く、労働生産性向上を目指す上で無視できない業務です。
ある統計データでは、1000人規模の会社で年間に実施する会議の総和が、約200万時間でそのうちの約30~40%が無駄な会議だということが分かっています。
つまり、人件費計算で約15億円ほどが無駄な業務に使われているということになります。
とてつもない損失です。
この記事が参考になる読者
「会議をうまくコントロールできていない」と感じている人は非常に多いのではないでしょうか。
- 会議をうまく回して業務生産性を高めたい
- 議論がいつもまとまらずに時間だけが過ぎてしまう
- どうやって会議を進めていいか分からない
この記事では、こういった悩みを持つ方に向けて実践的なテクニックをまとめています。
150億円規模の財務改善のプロジェクト推進を担当する中で毎週最大で10個近くの会議体を運営してきた経験から実用的なノウハウとしてお伝えしたいと思います。
この記事で得られるもの
この記事を読むことで、
- 会議を成功に導くファシリテーションテクニックが身に付きます
- 実際に明日から使える超・具体的なアクションが理解できます
会議のやり方に関する書籍は数多く出版されていますが、どれも水増しの内容が非常に多くて、私個人としては、得られるものに対して投資するお金と時間が見合わないなと感じてきました。
この記事では、特に重要なポイントに絞って、かつ明日から使えるレベルまで具体化してお伝えしますので、是非最後までお読んで、このノウハウを自分のものにしていただきたいと思います。
この記事の結論
- 出来る人は、目的共有→背景説明→論点整理→意見取りまとめ→結論付け→アクションプランを意識して会議に参加している
- 曖昧なこと、解釈に個人差が出るもの、何となくの感覚、は全て言語化・断言する
- 事前の準備と会議後のアクションまで含めて会議運営だと理解する
それでは、進めていきます。
会議成功の6つのポイント
司会進行役だけでなく会議に出席する際には、必ず意識しておきたいポイントをまとめました。
会議成功の6つのポイント
- 目的を伝える
- 背景を理解させる
- 論点をブラさない
- 意見をまとめる
- 結論を決定づける
- アクションを具体化する
こうして言語化されると全て理解できる内容だと思いますが、「実際に出来ているか?」と言われるとほとんどの人がNOではないでしょうか。
それくらいシンプルなことほど習慣化が難しいものです。
この記事では、これらを常に意識できるようになる、つまり仕事が出来る人になるための具体的なアクションまで共有してきますので、問題ありません。
それでは、具体的なアクションについて一つずつ説明していきます。
1.目的を伝える
会議の目的は、必ず冒頭で確認しましょう。
そして、できるだけテキストに起こしてください。
耳から入る情報以上に、目から入る情報は強烈に記憶に残るので、目的が書かれたスライドを議論の最中は常に投影しておくことをお勧めします。
また、目的に対して参加者全員が理解できているかの確認をします。
「本日の会議は●●が目的ですが、ご不明点はありませんか?」
このように必ず参加者全員から同意をもらうようにします。
サラッと読み進めてしまうと聞こえているだけで、脳で聞いていない人が出てきてしまうので、必ず「こちらで理解合ってますか?」と問いかけることが大切です。
2.背景を理解させる
議題の背景が参加者同士バラバラだと議論の質も安定しません。
議論するために必要な情報は予め与えてあげる必要があります。
具体的には、3つの情報を与えることを意識してください。
背景を伝える時の3つの要点
- これまでの経緯とこれからの進め方はどんなか?
- この言葉の意味・定義は何か?
- これを議論するための前提条件は何か?
①はどういう経緯で今に至るのか?この会議を経てこれからどんなステップ感で進んでいくのか?というストーリーを理解することで本日の会議の目的をより深く理解してもらえます。
②は、例えば『スタッフ部門の・・・』という言葉があった時に、『スタッフ部門』とは何を指しているのか?が人によって解釈が分かれますので、「マーケティング部も含むのか否か」などを明示することが必要です。
③は、例えば『旅行先を決める』という目的があった時に、場所を決めるだけでいいのか、旅先での食事やレジャーなどのコンテンツまで決めるのか、は解釈が人によって変わることがあるため、共通認識化をしないと論点がズレてしまいます。
3.論点をブラさない
議論をする際には、必ず「何について話し合うのか?」が決まっていないと発言がバラけてしまいます。
例えば、「美味しいカレーを作る」という目的に対して論点を設けずに議論してしまうと、具材について話す人もいれば、「そもそも外食した方がいい」と発言する人も出てきてしまいます。
論点とは「具材を決める」とか「スパイスから作るか市販のルーを使うか」などのように、議論の範囲を限定することを意味します。
論点は、冒頭に目的と併せて参加者にはお伝えすることが重要です。
また、議論が途中で論点から外れてしまう時には、議論を論点の中に戻す役割も担う必要があります。
論点は皆さん忘れてしまいがちですから、目的が書かれたスライドに論点も併せて記載して、議論中は常時投影し続けることをお勧めします。
4.意見をまとめる
議論の全体を把握している人は非常に少なく、言いたい放題した後に、「で、どんな意見が出たっけ?」みたいになることがありますよね。
目的と論点を常に意識しながら、出てきた意見を要約したり、意見と意見を掛け合わせてまとめ上げることが求められます。
これはシンプルにメモを取りましょう。
頭の中で意見をまとめる作業は天才以外は無理だと思った方が建設的です。
誰が何を言ったのか?をメモに残しておくことで、意見をまとめやすくなります。
そして、意見をまとめるタイミングですが、なるべく議論の途中でも2~3回挟むことが望ましいです。
よく1時間みっちり議論してから出てきた意見をまとめる人がいますが、そもそも意見の受け取り方が間違っていたら、議論のやり直しになってしまいます。
なるべくこまめに「Aさんの意見はこういうことですよね?」「その上で、Bさんのこういう意見があるわけですね」というように整理していきます。
人間、自分では意見がまとまらずに発言することは多いです。
他人に整理してもらうことで「そうそう、そういう意味なんだよ」って自分でも整理が付くことはよくあることです。
5.結論を決定づける
意見を整理することに留まらず、結論づける必要があります。
会議の目的が案件の承認だとすれば、「Aという条件を満たせば、こちらは承認ということでよろしいですね?」とか、「本件は承認だと理解しましたので、次のステップに進みます」とか結論づけることが重要です。
よく否定されることを恐れて、結論を曖昧にしてしまう人がいらっしゃいますが、これは危険です。
何となく「これは目的が達成できただろう」と感じていても、他の参加者はそうは思っていないこともありますから、最後には思い切って結論を断言する方が結果として前に進みます。
なので、ここでのポイントはシンプルに『勇気』です。
複雑な議論であればあるほど、結論を明言することは非常にストレスがかかるのも分かりますが、しっかりと断定しておくことで進みは早くなります。
6.アクションを具体化する
結論付けて終わってしまっては正直2流に留まってしまいます。
出来る人は次のアクションまで決めて、参加者にボールを持たせます。
例えば、「案件を進めることで決定したので、Aさんは契約書の締結に動いてください。BさんはX部署のCさんに情報共有をお願いします。Dさんは私と一緒に稟議書の作成に取り掛かりましょう。」といったように。
これは思い付きではできませんので、ポイントとしては会議前に想定しておくことが重要です。
「もし会議の目的を想定通り達成できたら、次はこんなアクションが待っているだろう」とその後のアクションプランを予め作っておくことが重要です。
これが出来ている人は私の経験では全体の5%くらいです。
ほとんどの人は「では、改めて次回の動きをご連絡します」で締めくくります。
ここで仕事のスピードの早い遅いが決まってくるんだろうと思います。
番外編
今回はよりポイントを6つに絞りましたが、会議運営には多くのテクニックがあり非常に奥が深いものです。
番外編として、多くの人がやっていないけど、私がよくやる効果的なテクニックを1つご紹介します。
それは、中盤のアイスブレイクです。
アイスブレイクは皆さん冒頭にやるものだと思っているようですが、実は中盤の方が効果が高いと個人的には感じています。
会議中の参加者をよくよく観察してみると分かりますが、60分もの時間をずっと集中できている人ってあまりいないんですよね。
なので、ハーフタイムみたいな感覚で議論と議論の間の一呼吸みたいなタイミングで冗談を入れてみたり、あえて関係のない話をしてみたりして一度集中を切らすことで仕切り直して後半戦に挑めるので、かなりお勧めです。
まとめ
- 出来る人は、目的共有→背景説明→論点整理→意見取りまとめ→結論付け→アクションプランを意識して会議に参加している
- 曖昧なこと、解釈に個人差が出るもの、何となくの感覚、は全て言語化・断言する
- 事前の準備と会議後のアクションまで含めて会議運営だと理解する
それでは、また!