経営/ビジネス

なぜ小売業者はなくならないのか?|サプライチェーン経営の基礎を徹底解説!

小売り業者がなくならないワケ

小売業者を挟めば『顧客満足度』も『事業収益性』もハネ上がる

この記事では商売の基本のキサプライチェーンの本質を理解することができます。

生産から消費までの流れは業界問わずあらゆるビジネスの本質です。

私は大手小売企業で商品開発、店頭販売のマネジメント、経営企画、新規事業を経験し、経営業務を推進してきました。

D2Cと騒がれて10年以上が経っているにもかかわらず、一体なぜリテーラーが姿を消さないのか

そんな疑問を私の実体験と商業理論の視点から分かりやすくお伝えしたいと思います。

D2Cビジネスに興味がある、メーカーに勤めている、小売業が衰退産業だと思っている。

そんな読者に向けて、商売をする上での本質的な構造が理解できる内容になっています。

 この記事を読むことで、自分のビジネスの強みや欠点に気づくことができるだけでなく、小売業に対する世間のウソに騙されずに、戦略や施策を正しい方向へ導くことができるようになります。

 

この記事の結論

  • 生産から消費に至る過程には様々なコストが発生している
  • 生産者と消費者が抱えるコストを小売業者が一手に担っている
  • その結果、効率運営がなされて商流全体のコストが下がっている

つまり、小売業者が介在することで、本来は生産者と消費者が双方で負担するはずだった膨大なコストが削減されるというわけです。

小売業者に支払うコスト < 元々負担するはずだったコスト

この方程式こそが小売業者の存在価値というわけなのです。

 

小売業者が絶滅しないワケ

なぜ中間マージンを支払ってまで小売業者を挟まなければならないのか?

誰しも一回はそう思ったことありますよね?

「生産者がダイレクトに消費者へ商品を届ければ、生産者はより収益が上がるし、消費者はより低価格で購入できるじゃん!」

「メーカーからしたら小売店舗で販売なんてしたら、賃料は取られるわ、売上はレベニューシェアで折半されるわで、いいことないよ。」

「消費者にしても、小売業者を挟む分は商品代金に上乗せされて、高い値段で買わされてるってことでしょ?」

こんな風に思い始めると、みんなが行き着く先は、

小売業者って不要だよね」っていう仲介業者不要論ではないでしょうか。

私だって最初はそう思ってました。正常な反応だと思います。

ただ、どういうわけか、小売業者は無くなってはいません。

ネット社会が到来し、生産者が直接消費者へリーチできる環境が充実しました。

にもかかわらず、急成長するサービスには、アマゾン、ZOZO、三井アウトレットパーク、メルカリ、モノタロウ、など小売業者が軒を連ねています。

さらに大都市では、商業施設が次から次へと建設されています。

どうやらメーカーやブランドの路面店まみれにはなっていないようです。

つまり、小売業者の存在は生産者にとっても消費者にとっても何かしらのメリットがあるようです。

そうでなければ、経済合理性の渦に飲まれて小売業者は今頃全滅していたことでしょう。

生産者にとっても消費者にとっても小売業者がいない世界よりも、中間マージンを支払ってでも介在してくれる世界の方がメリットが大きいというわけです。

では、小売業者は一体どんなメリットを市場に提供しているのでしょうか?

 

生産者コストと消費者コストってなに?

生産者コストと消費者コストという言葉をご存知ですか?

商品が生産され消費者の手に渡るまでには様々なコストが発生しています。

生産者が負担するコストとしては、

  • 商品の原材料コスト
  • 商品を製造する生産コスト
  • 商品を点検する検品コスト
  • 商品を倉庫で保管する管理コスト
  • 商品を消費者に届ける輸送コスト
  • 商品を知ってもらうための宣伝コスト
  • 商品を詳しく紹介する販促コスト

消費者が負担するコストとしては、

  • 商品を買いに行く移動にかかる時間コストと移動費
  • 商品を選ぶ比較検討の時間コストと調査費

ちょっと抽象的でわかりづらいですね。

これを料理シーンで具体的に考えてみます

小売業者のいない世界でカレーの食材を買いに行ってみましょう。

消費者であるあなたは、まずはジャガイモ農家に行ってジャガイモを選びます。

しかし、たくさんある農家のうち、どの農家が信用できる農家なのかが分かりませんから、聞き込み調査をしたり、試しに買ってみるを何度かやりながら、信頼を築いていきます。

次にニンジン農家、その次に玉ねぎ、お肉、スパイス、お米・・・。

それぞれの農家は当然一か所にはありません。

点在する各農家を回りながら、信頼できて美味しい食材を作っている農家さんを探していきます。

自宅と農家との往復には膨大な時間とお金がかかってしまい、とてもカレーを食べられる状況ではありません。

生産者の視点からも考えてみます。

いつどのくらいのお客さんが自分の農家に来店するのかが分かりませんので、365日24時間、営業していないといけません。

もちろん商品管理にもお金がかかります。

「そんなことなら農家の近くにお店を構えてしまおう!」なんてしたら、土地を契約して、お店を建てて、人を雇って、宣伝して、販売して・・・。

こんなことをしていたら本業の生産活動に時間が割けなくなりそうです。

 

中間マージンはコストなのか?

小売業者のいない世界でカレーの食材を買ってみて、どうでしたか?

でもECがあれば、クリック1つで自宅に届くよね?

そんなことありません。

数百件あるジャガイモ農家のホームページを端から端まで調べて行って、どんな農薬を使っているのか、味はちゃんと美味しいのか、品質は大丈夫なのか、を調べることが果たしてできるでしょうか?

1クリックで注文できるサイトは大抵は小売業者のマーケットプレイスです。

ごく稀に実績や信用性が明確な生産者のホームページから直接買うことはありますが、生活関わるあらゆる消費財を同様のプロセスで消費することはできません。

生産者にしても同じことです。

すべての生産者が生産から販売までを一気通貫で運営することはかなりの労力(=コスト)がかかります

これで小売業者の存在意義が何となくお分かり頂けたかと思います。

生産者と消費者がそれぞれ負担するコストを小売業者が請け負うことで効率の良い商売を実現しているのです。

そうすることで生産者はモノづくりに専念することができるわけです。

生産者自ら直接消費者に売ろうものなら宣伝から販売、在庫管理まで多くの仕事を内製化しなくてはなりません

消費者も同様に、自ら欲しい商品を品質調査から実際の調達までやろうものなら、現地までの移動や比較検討にかかる時間もお金も膨大にかかってしまうでしょう。

小売業者は商品をより安くより安全に消費者の元へ届けるための一連の機能を担う商流の大動脈

もちろん仲介業者と呼ばれるのは小売業者だけではありません。

配送を担う運送業者、在庫管理を担う倉庫業者、調達専門の卸売業者など商流の中間プレイヤーは数多く存在します。

その中でも小売業者は消費者と直接繋がっているため大きな責任を背負っています。

そのため、時には他の中間プレイヤーを監督して商品の品質を保ち、お客さまが安心安全に買い物ができる環境を整えているのです。

 

小売業者がコストを利益に変える具体例

では、より具体的に小売業者がどういった形で生産者と消費者のコストを肩代わりしているのかについて説明します。

先ほどのカレーの事例から代表的な3つのコストを挙げたいと思います。

 

① 商品の保管

各生産者が個別で商品保管をする場合、生産拠点の近くで保管すれば、消費者にわざわざ来てもらわないといけません

逆に顧客の近くに倉庫や店舗を構えようとすれば、保管場所は分散し管理コストは上がってしまいます

小売業者は顧客の近くに店舗を構え、それぞれの商圏に適した物流拠点を構えています。

生産者ごとに管理コストを計上するよりも小売業者へ一括委託することによって、商品管理業務は集約され効率化されていきます。

規模の経済が働くこととでローコストオペレーションが実現します。

生産者にとっては自社管理コストよりも委託料を支払った方が安上がりですし、消費者としては生産者をいくつも回る必要もなく自宅の近くの小売店ですべてが揃います。

 

② 商品の選定

生産者へ直接買いに行く世界では、消費者はどの生産者の商品を選べば良いのか?を比較することが非常に困難です。

生産者に1社1社アクセスしながら情報を集め比較します。

最終的に信用ができて、安心安全を保証するまでには多くの調査コストが発生します。

小売業者は仕入れる際に生産者の信用度や商品の品質を評価してから納品します。

流通過程では必ず検品・補償を挟みますから、消費者は小売業者が仕入れる商品を安心して購入することができます。

つまり、小売業者の存在によって消費者は自らの時間とお金をかけて生産者の信用と商品の品質を調査するコストが削減できたわけです。

 

③ 移動の利便性

リアルでもネットでも生産者へ直接アクセスするということは、買いたい商品の数だけ移動が発生します。

カレーの例でも具材の数だけの移動コストが重く、とてもカレーを作る気にはなりませんでした。

小売業者は関連する商品を店舗に集約し、見込み客の近くに店を構えてくれます。

そうすることで、消費者は小売業者を1店舗ないしは2店舗ほどで欲しい商品をすべて買い揃えることが可能になります。

本来、消費者が支払うべき移動コストが削減されたわけです。

生産者数×往復移動コスト(大) > 訪問する店数×往復移動コスト(小)

こんな方程式が成り立つはずです。

 

このように、小売業者は中間マージンを受け取る代わりに生産者と消費者双方のコストを肩代わりし、効率化することで中間マージン以上のリターンを与えているのです。

要点まとめ

最後にこの記事の要点をまとめます。

要点まとめ
  • 生産から消費に至る過程には様々なコストが発生している
  • 生産者と消費者が抱えるコストを小売業者が一手に担っている
  • その結果、効率運営がなされて商流全体のコストが下がっている

経営/ビジネスにおいて、生産・流通・消費の関係性を構造的に理解できていなければ、間違った方向へ舵を切ってしまうことになりかねません。

逆を言えば、構造さえ理解できていれば、課題を発見したり、戦略や戦術を適切に導いて行くことも、かなりスムーズに実行できることが実体験から分かってきました。

業種業界問わず応用が可能な知識ですから、学ぶ投資効果としては非常に効率が良い領域だと確信しています。

最後に、私が読んできた関連書籍の中でもダントツで良書だった1冊を紹介して終わろと思います。

他の書籍を時間とお金をかけて何冊も読むなら、この1冊を繰り返し読んだ方がずっと効果的だと考えます。

念のため・・・旧版もありますが、EコマースやSNSのインターネットビジネスの視点が盛り込まれている新版にしたほうが正しく理解が深まるかと思います。

それでは、また!!

 

COMMENT

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です