消費者行動心理を突いた15の交渉テクニック
この記事では、私がファミレスで居合わせたある勧誘の実話です。
勧誘だろうと営業だろうと『売りたいものを買ってもらう』という本質は変わらないことを身をもって感じました。
この記事を読むことで、買ってもらうための交渉術が身に付けられるとともに、顧客行動心理についても学ぶことができます。
私も大学時代に、家電のセールスで前年比570%の売上を達成して、全国トップの販売実績を残した経験があります。
その経験から見ても、今回の勧誘マンのセールスノウハウは見習うことが非常に多かったです。
売上実績を作りたいけど思うように成績が伸びない方や、従業員のセールスパワーを向上させたいと思っているマネジメント層の方にはぜひ読んでいただきたいと思います。
この記事の結論
- 交渉テクはどんな商品にも応用が可能
- 相手の思考と感情の変化に合わせて話す
- 相手の心理状態をコントロールする
- 相手視点で話を展開させる
今回は実話なので、時系列に沿ってストーリー立ててお伝えいたします。
とあるファミレスでの男女2人組の正体
都内の駅チカに位置するチェーン店でお茶をしていた時の話。
20代前後の女の子が30代中頃の派手なスーツの男性に連れられて入店してきました。
その2人組は私の隣席に座ると雑談を始めたのですが、初対面のようなやり取りで不思議に思ったので、聞き耳を立てているとどうやらガールズバーの面接だったようです。
女の子は、大学進学で上京してきた一人暮らしの高畑充希さん似の17歳。
最近付き合い始めた彼氏がいるとのこと。
(再来月に18歳になるようですが、後々考えると17歳の風俗って犯罪では・・・汗)
男は、30歳〜35歳程度で金髪と黒髪が入り交ったロン毛。
168㌢の小太り体型で、歌舞伎町に1万人くらい居そうなチャラいヤンキーの風貌。
子供連れの主婦や学生も利用する大手チェーンのファミレスだったもので、はじめはまさか風俗の勧誘をしているとは思わずに話を聞いていました。
ただ、徐々に明らかになったのですが、男の目的はガールズバーの面接ではなくピンサロへの勧誘だったのです。
ガールズバーに応募したつもりが・・・
他の風俗と比べてピンサロの勧誘マージンが良いのか、この男の勤め先がそもそもピンサロなのかは分かりませんでした。
ただ、その女の子は確実にガールズバーへ応募をしてきた子でした。
まさかそんな集客導線があるとは知りませんでした。
おそらく一般的にはキャバクラやガールズバーに比べて、ピンサロのような性風俗店の敷居は女の子にとっては高いはずですから、ピンサロ募集の直球勝負だとエントリー数が伸びないのでしょう。
これはセールスというよりマーケティング手法かもしれませんが、素晴らしい同線だと思います。
成約に進める交渉のテクニック
- 申込・購入のハードルを下げる
ハードルの低い入口を用意して誘い込んだあとに本当に売りたい商品を売り込む手法はまさに王道の営業テクニック。
風俗の勧誘も不動産や保険、化粧品と変わらない集客導線の作り方をしていることに感銘を受けました。
女の子としては、この時点ではまだガールズバーのバイトの面接を受けている気持ちでいたことでしょう。
相手をよく知り、戦い方を決める
まず男は、女の子に多くの質問を投げていました。
思い出せるだけでもこれくらいの質問はしていました。
女の子が話し始めると男は「へぇー、そうなんだ。」「なるほどね!」「いいね!」「面白いね!」「よく考えてるね。」「確かにそうだね。」と大きく頷きながら共感するように相槌を打ち続けていました。
これはセールスの基礎中の基礎ですよね。
成約に進める交渉のテクニック
- 同調して波長を合わせる
自分から話し始めるのではなく、徹底的に相手の素性を探り、そしてそれに寄り添うように共感をする。
女の子の口調からして、この時点で既に男に対してかなり心を開いているように感じました。
男はこの最初のコミュニケーションで女の子からの信用を勝ち取り、どのように勧誘するべきかの打ち手も手に入れたように思います。
女の子についてまとめるとこうです。
- 今年から大学に進学、1年生になったばかり
- 出身は地方で大学のために上京
- 都内に一人暮らしで家賃の半分程度は親負担
- 大学入ってすぐに彼氏ができて交際間もない
- 知り合いにガールズバーで働いている子がいて興味をもった
- ネットで検索して良さそうなココに応募した
- 家賃含めた日々の生活費が必要
- 彼氏や友人にはバレたくない
- 親にも言っていないバレたくない
- 大学があるから平日の夕方以降と土日時々働く感じが良い
- 大学ではサークルには入っていない
- 学業もあるが大変になるかはまだ分からない
- ガールズバーには少し不安もある
非常に多くの情報を引き出すことに成功していますよね。
これだけ素性が分かれば、提案の方向性や内容、言い回しが決まるので、非常にやりやすいと思います。
これは交渉時の上等テクニックです。
成約に進める交渉のテクニック
- 自己開示を生む徹底した傾聴
人間は自己開示をした相手には心を開く心理があるようです。
面白いのは心を開いた相手に自己開示をするのではないというところです。
「これだけ自己開示をしているということは信用できる人なんだ」
人間の脳はそうやって判断するみたいです。
不安を煽り、覚悟を問う
男はひと通り話を聞き、そして女の子にこんな感じで話し始めました。
この時点では、まだピンサロの勧誘だと理解していなかったので「風俗業の営業って意外とちゃんとしてるんだな」くらいに感じていました。
親身になって話を聞き、そして大変なことは大変だと正直に伝えて、学生であろうとも仕事への覚悟を問う。素晴らしいビジネスパーソンではないか、と。
しかし、ここからピンサロへの勧誘が始まりました。
後々振り返ると、ガールズバーで働くことへの不安を煽る一連の流れは、気持ちをピンサロへと振り向けるための段取りだったわけです。
つまりこれもひとつの交渉のテクニックというわけです。
成約に進める交渉のテクニック
- 不安を煽り退路を断つ
そのように言われてしまっては、女の子としては検討していた商品がどうも自分には合わなそうだ、と感じたに違いありません。
何か代替案が欲しくなる消費者心理をうまく付いています。
過去の自分と現在のあなた
すぐさま代替案を提示するよりも、より共通点を作ってからの提案は通りやすいですよね。
それを知ってか、男はここでも距離を縮める共感テクニックを使っていました。
これも交渉のテクニックです。
成約に進める交渉のテクニック
- 共通項を作り共感する
こうした共通項を作ることで、提案がパーソナライズされたものと感じられるようになります。
今回では、自分の過去の失敗談を話すことで、その過去の自分と女の子の今とを重ね合わせる手法を使っていました。
思わぬ選択肢の提示
ここでも3つのテクニックが使われていました。
成約に進める交渉のテクニック
- 一般論への論点ズラし
- 複数選択肢の提示
- 主体性の醸成
一般論への論点ズラし
「XXちゃんと似た女の子達がよく選んでいる」という一般論に視点をズラしました。
情報や知識のない商品サービスの提案を受ける時、ヒトは世論を気にします。トレンドやランキングが購買決定の要素になるのもそういう理由からです。
今回の場合この女の子は、非常にデリケートな決断をすることになりますから、安心感を持ってもらうことが不可欠です。
まず一般論やトレンドから入ることで、ストレス無く提案を聞くことができると思います。
複数選択肢の提示
ガールズバーの代替案がピンサロの一択ではありませんでした。
いくつかある選択肢から選んだという事実は消費者にとってとても重要です。
選べるものが1つしかないと、本当にそれを選んでいいものか?と悩んでしまいますよね。
主体性の醸成
提案を受けること自体に「どうしたいか?」と問いかけていました。
人間は自分自らが選択したことで主体性が高まります。
「商談は自分が進めているんだ」という認識を持つことで、何も買わないで終わりにくくなります。
作られたメリットとデメリット
いくつかの代替案がテーブルに出そろいました。
ここからピンサロに誘導する必要があります。
そう言って、ふたりはファミレスを後にしました。
一歩引いて聞いていると、明らかにピンサロへ誘導したいのがバレバレです。
ただ、女の子は男を信用している状態なので、この誘導には気づきにくいのでしょう。
ここでも複数のテクニックを使っていて非常に感心しました。
成約に進める交渉のテクニック
- Yesを引き出す質問
- 利害関係の放棄
- 軽微なデメリットの提示
- 逃げ道の用意
- 自分で選択させる
- 決断への称賛
Yesを引き出す質問
終始、女の子のニーズを汲み取ったメリットデメリットの提示を心がけています。
もちろんピンサロ以外の選択肢には許容できないデメリットが用意されています。
そして、必ず女の子に「はい」と言わせる問いかけをしています。
「こんなデメリットあるけど、これは嫌だよね?」と。
人間はYes、つまり小さな決断をし続けると、Noとは言えなくなってしまうようです。
利害関係の放棄
「出張ヘルスにしてくれると、自分の評価は高いけど勧めない。」
自分のインセンティブを犠牲にしてまで女の子の力になりたいと伝えています。
裏事情を暴露してくれるということは自分に心を開いてくれてるんだ、と思いますよね。
これによって信頼性はかなり高まりますから、出張ヘルスは選べなくなります。
軽微なデメリットの提示
ピンサロの唯一のデメリットはこの女の子からしたら取るに足らないものです。
デメリットが全くないというのは不信感を煽ることになりかねません。
許容できるデメリットを提示することは非常に有効です。
逃げ道の用意
「みんなもやっている」「まずは見学だけ。」「すぐに辞められる」「優しい仲間も居る」そんな言葉で安心させながら「決めるのは今じゃなくていい」という逃げ道を用意していました。
「失敗しても取り返しがつくし、今日決めなくてもいい」
これで行動と決断のハードルが一気に下がります。
多くの商品・サービスで、返品全額保証や初回無料を謳っているのはまさにこの決断のハードルを下げるための手法です。
風俗というデリケートなサービスだからこそ、この手法はかなり有効ではないかと感じました。
自分で選択させる
「どれが良さそうか?」という質問できちんと誘導していました。
やるかやらないか、ではなく、どれならやれるか、というやること前提の秀逸な誘導だと思います。
自分なりの意思を持って選択することで、自ら後戻りできない状況を作り出してしまったわけです。
決断への称賛
自分で選択したとはいえ、やはりその選択が正しかったのかという不安が残ります。
その選択に対して賛同してあげることで、決断を正当化することができるわけです。
とても素晴らしいクロージングだと思いました。
思考停止にいざなう助け舟
帰り支度をしながら、男は決定打を女の子に打ち込んでいた事にも衝撃を受けました。
それはこんなやりとりでした。
素晴らしい決定打だと思いました。
成約に進める交渉のテクニック
- 権威性による安心保証
私たちはお医者さんにはなぜか絶対の信頼を置いていますね。
極端な知識と経験の差がある相手から「もう心配ない、あとは私に任せて」と言われたら私たちの思考は停止をします。
最後の最後まで抜かりないクロージングで非常に感心しました。
まとめ
最後にこの記事の要点をまとめます。
- 申込・購入のハードルは下げる
- 同調して相手と波長を合わせる
- 相手の自己開示を生む傾聴に徹する
- 不安を煽ることで別提案のスキを作る
- 相手と自分の共通項を作り上げてる
- 一般論へ論点をズラして安心感を与える
- 複数の選択肢を提示して選択権を与える
- 相手の主体性を促し意思決定に導く
- Yesを引き出す質問でNoを言わせない
- 自分の利を投げ打って親身に振る舞う
- 軽微なデメリットの提示で安全性を強調する
- 逃げ道を用意して一歩踏み出す後押しをする
- 自分で選択させて覚悟を持たせる
- 相手の決断を称賛し正当化する
- 権威性を主張して安心保証してあげる
営業や接客というのは、お客さまとの間に経験と情報のギャップが存在します。
つまり、常にお客さま視点で話を一歩ずつ前に進めることが非常に重要だということです。
そして話を進めながらお客さまの思考や感情がどのように推移しているかを繊細に読み取る感性が必要だということを改めて感じました。
追記
話が面白かったとはいえ、ファミレスやカフェでの勧誘は基本的には周りのお客さまには不快感を与えますので、どうか健全な利用をしていただきたいものですね。
それでは、また!