即実践できるチーム力が上がる魔法の習慣
その病気の名前は、スマート(頭が良い人)病です。
これは私の造語ですが、カッコつけたいわけではありません。
いくら検索してもこの悪習慣の呼び方が出てこなかったので、便宜上名前を付けることになりました。
この記事は一見すると優秀な人材と映る要素を持った方に向けた記事です。
- 高学歴である
- 有名企業に勤めている
- 仕事ができて出世候補である
- 努力や挑戦を惜しまない
- 自分に自信がある
- 真面目で正義感が強い
この項目を見て少しでも心当たりのある人は要注意です。
私自身、長年スマート病にかかっていたにも関わらず、病気に気付くことなく多くの時間をムダにしてきました。
この記事を読むことで、「成果」と「組織」の性質が正しく理解できるだけでなく、真の意味での「成果」が出せる組織・チームのマネジメントテクニックが身に付きます。
自分が陥っていないか?だけでなく周囲にスマート病にかかっている社員はいないか?という視点でも読んでみてください。
そうすることで、その人との関わり方や、治し方が見えてくると思います。
この記事の結論
- 優秀な社員ひとりの成果より、みんなで作る成果が重要
- 持続可能な組織には主体性を持つ社員の醸成が不可欠
- スマート病は組織破壊の連鎖で収益性を悪化させる
それでは、具体的に説明していきます。
スマート病は自覚症状が全く出ない
「スマート病」という言葉は私のが勝手に呼んでいる造語です。
そもそもスマート病とは何かを説明します。
スマート病とは、賢くて優秀が故に、他人の力を借りずに一定の成果を出してしまう働き方のことです。
スマート病にかかっている人は、常に自分の力で考えて行動ができます。
そのため周囲よりも成長スピードが早く、成果も出していて、周りからも優秀な社員だと認められています。
だからこそ早くから出世をして重要な役職を任されていることが多いです。
「成果も出していて周りも認めているんだから、それのどこが悪いんだ?」と思った方がほとんどでしょう。
その通りです。悪くはありません。
まさに、この「悪くはない」がスマート病を発症させ、長年放置されてしまう原因なのです。
その成果は本当に称賛されるべき成果か?
スマート病患者は成果を出しています。
そして周囲からも認められています。
問題はその成果が本当に最大限の成果だったのか?ということです。
周囲からも認められている成果なわけですから、ある点においては確かに成果だと思います。
例えばそれは、「過去の実績を上回っている」だとか「誰も挑戦したことがなかったこと」だとか「期初の目標が達成されている」だとか。
しかしながら「成果」とは、そんな単純に比較・検証ができるような優しい性質のものではありません。
「その成果を超える成果が出せた可能性はありませんか?」という投げかけから考えてみて下さい。
団体スポーツで例えると分かりやすいと思います。
ある強豪との試合で2-1のスコアで勝つことができました。
成果としては『勝ち』、素晴らしいことです。
そこで「2-0、3-1にはできなかったのか?」という問いを立てます。
時間を巻き戻してその試合を複数回繰り返すことなんてできませんから、2-1で買ったという成果を別の成果と比較することはできません。
とはいえ、過去に一度も勝つことができていなかった強豪に勝ったのであれば、その過去との比較という点においての成果としては評価ができます。
しかし、試合内容を振り返ってみると、エースだけが活躍していただけで、周りもそのエースに頼りっきりだったとしたらどうでしょうか。
もしプレーヤーひとりひとりが力を発揮し、それがチームワークとなって戦えていたとしたら、どんな結果になったでしょうか。
企業とは持続的な利益と社会貢献を追求すべき組織体である
この経営の本質に気付くまでに多く時間を要してしまいました。
私はスマート病が常態化していたがために、ビジネスの本質と正しく向き合えないまま、空虚な成功体験に埋もれていたわけです。
これまでの成果や成長には目に見えない伸びしろがたくさんあったことにもっと早く気付いていれば、と反省しています。
自分だけが大きく貢献した成果ほどちっぽけなものはありません。
社会と向き合い、企業と向き合い、その存在意義の持続を願うならば、成果の主役は自分ではなく一緒に働く仲間でなければならないと私は考えます。
自分の存在が無くとも成果を出せる組織・チームこそ本当の強さではないでしょうか。
優秀な皆さんも是非自分ごとと捉えていただき、これまで積み上げてきた成果・実績をもう一度思い返してほしいと思います。
経営陣や上司、あるいはチームメンバーの中に実際にスマート病患者を持つ組織で起きているコトを説明します。
その上で、スマート病から抜け出し、大きな成果が出せる組織・チームにするためのテクニックをお伝えしたいと思います。
スマート病社員を抱える組織が陥っている状態とは?
「メンバーひとりひとりが主役となり大きな成果を残している。」
そんな素晴らしい組織やチームがあまり存在していないことに私は気付かされました。
自覚症状が出ない病気ほど怖いものはありません。スマート病は、特に日系大手企業に蔓延している印象を受けています。
では、そんなスマート病によって組織やチームの状態はどうなってしまうのか具体的に説明したいと思います。
スマート病が与える悪影響
- 承認欲求が満たされていない
- 新しい視点が加えられていない
- 仕事の自分ごと化が出来ていない
ひとつずつ説明していきます。
承認欲求が満たされていない
スマート病を患っている社員は優秀です。
自分で主体的に考え行動できる範囲が広いがために、チームメンバーから意見を聞くということが不足しがちです。
たとえよく聞くことがあっても、それは自分視点であって相手の立場を考えてのコトではないのではないでしょうか。
するとチームのメンバーは「自分は承認してもらえている」と感じる機会は少なくなってしまいます。
ヒトは認められることで、潜在的な力が発揮できる生き物です。
モチベーションの源泉には承認欲求が強く関係しています。
上司や同僚が優秀な社員であればあるほど、他の社員はどうしてもそれと比較をして自己承認感情が弱まってしまいます。
自分に自信がなく、意見が言い出しにくい、自分で決めることに常に不安が付きまとう。
行動に活気がなくなり、成果が出ずにまた自信を失う。そんな負のスパイラルが発生します。
そこまで酷くないとしても、例えば「この件は上司に決めてもらおう」とか「こうやって進めることを上司に許可してもらおう」とか「思うことはあるが発言は控えよう」なんてことが起こってしまっているはずです。
新しい視点が加えられていない
これまで成果を出してきたようにスマート病患者は、今回もまた素晴らしい思考力と行動力で推進していることでしょう。
しかし、どれほど優秀であっても、ヒトひとりの脳みそと身体の域を出ません。
画期的なアイデアや前例にない実績が出てくる過程には「知と知の結合」が必要不可欠です。
三人寄れば文殊の知恵、まさにそういうことです。
新しい視点が加えられていない業務は、どんなに成果が出たとしても、それは過去からの延長だったり、改革ではなく改善のレベルに留まっていたりします。
そして、複数人の知恵を組み合わせて行動を創造していく経験が足りない組織というのは、不確実性の高い計画やチャレンジを嫌うようになります。
過去にない発想は説明が付きにくく、失敗する可能性が高まります。
その分、成功することで得られるリターンも大きくなるのですが、ヒトはリスクに目が行きがちです。
優秀な人ほど自分に理解ができないことに対しては拒絶反応を起こしがちです。
そんな組織やチームが前例がないほど大きな成果を残すことができるでしょうか。
仕事の自分ごと化が出来ていない
優秀とされている人の前では、思考停止してしまう社員が多いと感じています。
「この人が言うなら、されが正しいのだろう」とか「自分の考えなんてこの人にとっては浅い考えに過ぎないだろう」なんて思ったりするわけです。
社長や上司の前では、多くの社員がイエスマンになってしまうのは、これが原因だと思いませんか?
この状態に陥ってしまうと、仕事は自分のモノではなく、社長や上司のモノだと勘違いするようになっていきます。
常に他人ごととして請け負う仕事はただ熟すだけになってしまい、責任感は薄れ、自ら考え行動することを嫌うか恐れるかするようになります。
これでは業務スピードが遅くなるばかりか、ちょっとした向かい風が吹いた途端に諦めることが多くなっていきます。
優秀な社員がいくら頑張っても、周囲の生産性は低下していく一方なので、組織・チーム全体としては弱体化していきます。
このようにスマート病患者は身近なチームメンバーから始まって、徐々に徐々に組織全体を蝕んでいくのです。
スマート病患者の成果の裏にはそれよりも遥かに巨大な負債を組織に蓄積しているのだと私は考えています。
スマート病の自覚、そして回復
ここまでお読みいただいて、少しでも身に覚えがある方は、自覚という大きな一歩を踏み出せたんだ、と自分を褒めてあげるべきです。
病気は原因不明の状態が一番恐ろしいわけで、その正体をよく理解し、正しく恐れることができれば、必ず回復に向かいます。
では、スマート病から抜け出すとは具体的にどういう状態を目指すことなのか?を説明したいと思います。
キーワードは、『自分以外が主役、自分不在を目指す』です。
「自ら考え、行動し、成果を出す」は優秀な人材の大前提です。
さらに真のプロフェッショナルに必要なのは「相手が自ら考え、行動し、成果を出す仕組み(環境)を作る」ことです。
それはすなわち組織と従業員の自走化です。
優秀な個人が不在であっても持続的に成長する組織を作り上げることこそ、優秀な皆様に与えられている使命だと認識してほしいと思います。
これは経営の本質でもあります。
経営とは、利益と社会貢献の双方で持続可能性を追求する知的活動です。
そのことをよく理解しないまま経営を任されたサラリーマン従業員ほど会社を崩壊させてしまいます。
より優秀な自分を追い求めるのか?
優秀な組織を追い求めるのか?
果たしてどちらが目指すべき道なのか?をしっかり考えてみて下さい。
真に優秀な人材が実践する習慣
では、目指す方向性はイメージできました。
次に大事なのは、そこにたどり着くための正しいアクションです。
具体的なマネジメントのテクニックを理解して、実践に実践を重ねながら、自分らしいマネジメントスタイルを確立していくことが必要です。
経営視点のヒューマンマネジメント
- よくよく相談する
- 相手に決めてもらう
- 感謝は言葉で伝える
簡単だと思いましたよね?
いえ、やろうと思えばかなり難しいです。
よくよく相談する
優秀な人ほど思考力も想像力も高い水準にあるため、自分でどうするべきか?が思いついてしまいます。
あとは実行において周りをどう巻き込むか?に論点を置きがちではないでしょうか。
もちろんとても素晴らしいことです。
ただ、どうすべきか?の段階から、メンバーにも意見をもらう機会を作ってみてください。
自分でイメージで出来ていても、1からメンバーと協働するわけです。
このように業務の上流工程から参加することで主体性が養われます。
そして、人は興味のない人や信用のおけない人には相談なんてしませんから、相談を受けた相手は「自分はこの人に認められている存在なんだ」だと感じるはずです。
相談されることで、承認欲求が満たされて、自分の存在意義や自信が確立されていきます。
ここで重要なことは「答えは始めから決まっているんじゃないか」とか、「相談してきたのに話を全然聞いてくれない」なんて印象を与えてしまうような言動に注意することです。
やましい気持ちで表面的に相談することは絶対に避けてほしいです。
「メンバーの意見をどうにか活かしたい」と心から思えるように考え方を特訓する必要があります。
相手に決めてもらう
課題の真因を究明し、阻害要因を解消するためのアイデアをメンバーと一緒に考えた結果、可能性のある複数の打ち手が机上に並びました。
あとは意思決定をして実行するだけです。
あなたが経営者や上司であれば、その意思決定を求められているはずです。
しかし、そこであなたが決めてはいけません。
メンバーが「アイデアは出したけど、結局やると決めたのは自分ではない」と評論家に成り下がってしまうことが、この意思決定フェーズでは頻発しています。
また、優秀な人ほど責任感が強く、リスクを負う意思決定もできてしまいます。
それでは、主役が自分のままではないでしょうか。
ここであなたは「君はどうしたい?」と投げかけてあげるべきです。
大切なのは、「どうすべきか?」ではなく「どうしたいか?」です。
「すべき」は客観的な視点で考えてしまいがちです。
必ず主体性を持たせるように自分がどうしたいのか?と考えさせてあげてほしいです。
そして、相手が決めたならば、「私もそれがベストだと思う。責任は私が取るから、これで進めてほしい」と権限委譲をすることで、実行フェーズにおいても相手を主役にすることができるわけです。
決めることは責任を負うことだ、と考えてしまい、なかなか決めてくれない相手も多いと思います。
その場合は、決めきれない要因を聞き出して、解消してあげることでメンバーが決めてもいいんだと思える環境を作り出すことが求められます。
感謝は言葉で伝える
仕事は半年から一年という長い期間を経て評価されることがほとんどです。
理由は、人事評価の頻度がそれくらいだからです。
ここで言いたいのはメンバーの仕事を評価してあげる機会が年に1〜2回しかないということです。
これは非常に少ないと思います。
日々の仕事でチームメンバーに感謝を伝えることって意識していますか?そして実行できていますか?
私の経験上、ほとんどの経営陣、上司は実践できていないと思います。
評価されず褒められずに成果が出るか分からない仕事を数カ月、一年継続するって非常に難しいと私は考えます。
モチベーションを落とさず壁にぶち当たっても建設的に考え行動し、乗り越えようとする。
そんな働き方を周りから褒められることなく進められる人材は一握りだと思います。
だからこそ優秀な社員の皆さんには周りのメンバーへ感謝を伝えてあげてほしいです。
仕事の最終の成果だけが褒める対象ではありません。
日々の細かなアクションや業務に対しても感謝したいことは多くあります。
大事なことは「褒める」ではなく「感謝する」です。
「褒める」って上から目線だと思いませんか?
そうではなくて「ありがとう」と言えば、相手との目線が同じなって対等な関係性を築けるはずです。
褒めるためには組織・チームの行動が見えていないといけません。
「この人、私のこと何も知らないのに褒めてくる現金な人だ」と思われては逆効果です。
これも表面的な感謝ではなく、日々しっかりとコミュニケーションがなされた上で、心から感謝をすることが重要だということです。
まとめ
最後にこの記事の要点をまとめます。
- 「一人の成果」に隠された『みんなの大きな成果』に目を向ける
- 経営は持続可能な組織を追求すべきである
- 自分の成果よりも周りを優秀にするマネジメントへ
改めて自社の状況を思い返すと自分自身も含めてスマート病にかかっている役員、管理職って多いと思いませんか?
正直、優秀なサラリーマンの多くはスマート病です。
どうか改めて経営視点に立って、何が本質的な成果の形なのか、全社最適とは何なのか?を考えてみてはいかがでしょうか。
それでは、また!